構造医学では生理歩行の指導を重視していますがこれには理由があります。歩行はわたしたちが日常的に行っている基本的な動作であるため、意識も感心も示さないかもしれません。近年は歩行について関心が持たれるようになってきましたが、まだ美容や健康の効果効能ぐらいにしか認知されていないのではないでしょうか？しかし、歩行の本当の意味はもっと奥が深いもので、ある意味病院に通う必要性が無くなるほどの治療的意味があるのです。日常的な当たり前のことにこそ問題解決のカギが隠されているのです。
構造医学では移動、捕食、生殖の三つを三大生理要素と呼んでいます。野生動物や古代人は、食料を手に入れるために日中は移動し夜間に休息する、というサイクルを繰り返して子孫繁栄してきました。つまり移動（歩行）は生命活動の基本であり、食事による栄養摂取と車の両輪の関係にあります。私たちの健康がこのように保たれているとすれば、病気や障害をどう克服するべきか答えは自然と導き出されるでしょう。
移動の重要性を考えたとき、からだのつくりと移動様式との関係、および住環境の影響を考えないわけにはいきません。
ここで最も重要なことは、地球には１Ｇの重力が常時わたしたちのからだに圧し掛かっており、この影響下で日常を暮らし成育しているという事実です。実際に生物の形態が重力場（環境）と生活動作（移動、運動）によって変化することもさまざまな研究で明らかになっています。わたしたちの身体機能の安定や健康状態の安定は重力の恩恵を受けて成り立っているといえます。
重力がからだに及ぼす影響を正しく理解して対応すれば、病気や障害の克服を大きく手助けすることになるでしょう。近年増えてきた病気や障害のなかには現代の住環境の変化や、病医院での過剰診療から新たに発生してきたものも少なくないと聞きます。
どんどん複雑さを増してどうあるべきか判りにくくなってきた現代社会にあってこそ、一度冷静になって“自然界に学ぶ”という原点に立ち返る必要があるのではないでしょうか。
この自然界の営みに素直に従って複雑化した問題を解決していこうという試みが構造医学の精神であり生理歩行の実践なのです。